大沢在昌・京極夏彦・宮部みゆき公式ホームページ『大極宮』
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- 第454号 -
2010/7/22
燃えよ山椒大夫 〜 大沢在昌のコーナー
講演会
2回目となるダイエット合宿を勝浦でしてきました。
前回で体重はそこそこ落ちていたので、まあこれでいいかな…と思いながらも、ここは一発引き締めにと5日間ほどおこなってきたのです。
そして東京に戻ってきてから、書籍などの取次販売をしている栗田出版販売株式会社さん主催の書店さんを招いた会で講演をしました。
内容は…今年の2月に別の会でおこなった講演と同じく、本がどうして売れなくなったのか、電子書籍が普及したときにリアルの本屋さんはいったいどうするのかというものです。
オイラの話がなぜこんなにウケるのかよくわからないのですが、つらつら思うにわりと本音で厳しいことしか言わないからかもしれません。電子書籍が普及した場合に、紙の本屋さんに生き残る道はあるのかという問題に関しては基本的に“ありません”と答えますし…。
ただ、紙の本屋さんでしかできないことをすればある時間お客さんをそこにつなぎとめておくことができるのではないかとか、現状の出版流通に関する問題意識はどうかとか…そういったこともいろいろしゃべっているわけです。
講演中、年配の書店経営者の方は顔が険しくなっていき、若い方たちはむしろ身を乗り出して食い入るように聴いてくれます。このあたりは前回の講演と同じ光景ですが、今回は大きなチェーン店の方を相手にしたものではなく、駅前の小さな本屋を経営していらっしゃる方ばかりなので、皆さんの危機感はより切実なのではないでしょうか。
それと、電子書籍が売り出されるから本が売れなくなるというのは、オイラは違うと考えていて…もともと本が売れなくなる、売りにくくなる状況は、この10年のあいだに出版界が作ってきたわけで、それが今、不景気やデフレ現象ともあいまってさらに本を売りにくい時代にしているというのが現実。電子書籍が出てくるからどうのこうのという以前に、やるべきことがあるのではないか。それは著者、版元、取次、書店も含めたこの業界全体にあるはず。他の業種はバブル以降にいろいろなダウンサイジングをしてムダを省いたり、あるいは消費者寄りのものの考え方をするなど…やり方を変え、それによってなんとか回復した企業や業界もある。
そんななかこの出版業界だけは、とにかく戦前からほとんどシステムは変わっておらず、それでもなおかつ変えずにもたせようとしてきた。そこが今、電子書籍の台頭によって変らざるをえなくなってきている。
だからといって電子書籍がすべて悪いというものではないとオイラは考えているのだが…この話は長くなるのでこのくらいでやめておきます。
厨子王の逆襲 〜 京極夏彦のコーナー
◎今週の化け大◎
三回目となりました月例化け大講義がございました。
今回の講師は分子生物学者の武村政春さん。「なぜお化けで分子生物 学?」という話でございますが、武村さんは『怪』にもご執筆いただいております他、『ろくろ首の首はなぜ伸びるのか 遊ぶ生物学への招待』(新潮新書)をはじめ、お化け関係の御著書を何冊も出版されております大の妖怪好き。
研究家の方が妖怪を語られる場合、多くは妖怪「を」専門分野「で」語られることになるわけですが、武村さんの場合は妖怪「で」分子生物学「を」語るというスタイル。これが抜群に面白いわけですね。面白いのですが、素人にはちょっと難しくもあるわけで(最先端科学ですからね)、私が一般代表で聴き手として参加させていただきました。
題して「メデューサのDNA」。メデューサを手掛かりに、生物の発生、成長、そして進化の仕組みをわかりやすく話していただきました。
いつも満席の化け大講義ですが、今回もたくさんのご応募をいただきました。惜しくも抽選に洩れた化け大生のみなさんにはUstreamで中継された模様。武村さん、受講生のみなさん、ありがとうございました。
その後、聴講に来ていた村上健司くんを交えて「怪」一味の密議が。密議ばかりしている気がします。
今月は『西巷説百物語』(角川書店)の発売記念イベントがございます(すでにチケットは完売のようですが)。来月は京都の化け大祭、そして遠野も控えていますので、気が抜けませんね化け大スタッフ(何人もいませんが)。『怪0030』『コミック怪vol.11』、志水アキさんの『魍魎の匣5』も出ますし。
ちなみに、『西巷説百物語』の初版カバー裏は、いままでと同じく何か刷られている模様。
◎今週のもろもろもろ◎
もろもろが、もろもろにあったのですが、週末の段階ですでになにがなんだかわからなくなってしまいました。
『虚言少年』最終回が載った「小説すばる」(集英社)が届いたことは覚えています。
それから、『ゲゲゲの素(もと)』(徳間書店)という水木しげる短編アンソロジーの解説と装幀をさせていただきました。妙なタイトルですが、第二期アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』の中から鬼太郎以外の作品を原作 にしたものをピックアップし、その原作となるマンガを一冊にまとめてみようという企画ものです。残念ながらすべてを掲載することはできないので、ページ数にあわせた作品選定を依頼されたという次第。どれも面白いのでたいへんに困ったわけですが。
先行して『ゲゲゲ家族の肖像』も発売されるようです。お楽しみに。
夏になりましたので、各地でお化け企画が目白押しのようです。
新宿マルイワンで、期間限定ショップ『妖怪横丁』が7月26日から。
東中野のVitaminTeeでは東雲騎人「妖怪風流・弐」がやはり7月26日から。
井の頭自然文化園ではスタンプラリー「日本の動物と妖怪 Part2」が7月17日から(天野行雄さんが絵を担当されています)。
コンベックス岡山では「妖怪おばけ屋敷大博覧会2010」が 8月10日から(妖怪百貨店コーナーには、全国のお化け者達の作品が売られる模様)。
それから松屋銀座の8階大催場では、「水木しげる米寿記念・ゲゲゲ展」が8月11日から。
兵庫県立美術館では「水木しげる・妖怪図鑑」展が7月31日から開催されます。こちらの図録には一文を寄せさせていただきました。
まだあるかもですが、もろもろ、追ってご紹介いたします、はい。
編集者Sのウラ情報
書店の未来像……
15日、今回も新しい直木賞作家が誕生しました。直木賞はひとつのブランドではありますが、作家としての成功を約束してくれるものではありません。それはすべての賞にいえることであるのですが。今回受賞者の今後の活躍を期待しております。
さて直木賞選考の前日、書籍取り次ぎ会社の一つである、栗田出版販売を仕入れ先とする書店さんの会で大夫が講演をしたので、同行しました。栗田さんは中規模の取り次ぎで、卸している書店さんも中?小規模の、それこそ郊外駅前型立地で個人経営のお店が多いわけです。それだけにこのところの電子出版の流れにたいして、一番危機感を強くお持ちです。講演終了後の懇親会で、いくつかの書店さんとお話しさせていただいたのですが、規模が小さいからこそ、地元に根をおろしているからできること、皆さん真剣に将来像を描いておられます。そんな皆さんをみていて、オフィスをして何か出来ないかなあと、考えている次第です。
ノリノリ編集後記
講演
大沢さんの講演を聴いてきました。大沢さんといえば『ミステリーと私』という演題が、とっても練りこまれていて面白いのですが…今回は“出版業界の現状から未来を考える”みたいな、今話題の電子書籍に関することもまじえて話されました。いやいや、これもとっても面白かったですよ。
今や出版界のことを語らせたら“佐野眞一か大沢在昌か”…ってなぐあいじゃないでしょうか。今後、もし機会があるようでしたら、皆さんもぜひ足をはこんでみてくださいませ。
(さあ、遼くんは何位になるでしょう。優勝かな!?…ノリ)
アンケートから
グッズ!
◆いつも楽しく拝見させていただいていますが、その度に気になっていることが一つあります。
それは、”オリジナルグッズ販売”のところがいつ来ても準備中のままになっています。何か販売予定のものがあるのでしょうか?
・今のところ予定はありません。
何か発売される際にはきちんと告知いたしますね。
長い目で見守っていただけるとありがたいです。