大沢在昌・京極夏彦・宮部みゆき公式ホームページ『大極宮』
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- 第486号 -
2011/3/25
燃えよ山椒大夫 〜 大沢在昌のコーナー
東北関東大震災
地震から10日以上が過ぎました。ほんとうに辛い思いをされている方がたくさんいらっしゃいます。
そういう意味では日本全体が傷つき、そして沈んでいる感じですが、少しでも前を向いていければいいと思っております。
この状況の中で、小説家であるオイラはいったい何ができるのかと考えずにはいられない日々であります。
ミステリーというジャンルの特性上、やはり人の死というものをどうしても物語の中で扱うわけですが、現実に起こったこんな残酷な出来事の前に、フィクションの死をどう描き、そして登場人物に受け止めさせていくのかは、大きな大きなテーマとして自分の中にあります。
おそらくこの大震災の影響で、様々な変化が文芸のみならず、音楽や映像の世界にも起き、創作者とそれを受け止める側の心理も変化していくような気がします。まあこれは時間をみてということになりますが…。
そして、先週おこなわれる予定であった「日本ミステリー文学大賞」の受賞式は中止になってしまいました。
それはもうこの状況下では、もちろんやむをえないと考えております。
残念とかそういう気持ちよりも、むしろホッとしたのが正直な心境でしょうか。ホッとしている…というのは奇妙な言い方なのですが、いろいろと不便な中を受賞式に来られる方、あるいはその後の二次会等でなにか不測の事態が起きてご迷惑をかけてしまう不安から解放されたというか…それを心配しないですむ意味でホッとしたということです。
いただいた賞金の半分を義援金として寄付しましたが、なにか他にもできることはないかと今も考えております。
あと、なにより腹立たしいのは…いつまでたっても暖かさが、とくに被災地であるところの東北や北関東地方に、春らしい暖かさがやってこないことです。
いつもならとっくに桜が咲いている、あるいは暖冬だともう満開になるぐらいの暖かさになっている年もあるのに、今年にかぎって春の訪れが遅いとは…。
ほんとうに自然というのは、人間の営みとは無関係に動いていくのだなあと恨めしく思ってしまいます。
とにかくこれからまだまだ長い時間が、人々の心に、生活に、平穏を取り戻すのにかかるかと思いますが、一日でも早くそういう日が来るのを心から願っております。
安寿のがまぐち 〜 宮部みゆきのコーナー
東北関東大震災
このたびの東北関東大震災で被災された皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。
1日も早く、一人でも多くの方々に平穏な日々が戻りますよう、願うばかりです。
そして、今この瞬間にも、被災地で様々な活動に従事しておられる皆様に深く敬意を表し、ご無事をお祈りしております。
私が今、学芸通信社さんを通して連載小説を配信してもらっている地方紙のなかには、被災地の新聞社もあります。今はまだ小説の掲載は休止中ですが、早く再開したいというお言葉をいただき、むしろ私の方が励まされる思いでした。
東京は幸運にも大きな被害を免れ、首都としてしっかり機能しているのですから、私も節電を心がけつつ、気持ちを強く持って書き続けたいと思っています。
私たち作家の仕事は、この危難の際には<不急>のものです。
でも、出版界もこの国の経済界の一角にあるのですから、被災者の皆様を支え、被災地を復興する経済を支えてゆくためには、微力ではあっても、<不要>のものではないはずです。私はそう信じて頑張りたいと思います。
弱虫の私は、今も余震にビクビクしてしまいますが、東京大空襲と戦後の食糧難を経験している年老いた両親は、震災にも福島原発の不安な情報にも、ずっと落ち着いています。過去の経験が、両親を強くしているのだ。そう思ったら、私もこの経験から学んで強くなりたい、という気持ちが湧いてきました。
寒気が戻ってきたここ数日、エアコンやストーブのかわりに、レンジでチンする湯たんぽを使って机に向かっています。私たちと同じような座業で、私と同じように腰痛持ちの方には、冷えの予防にもなりますからお勧めです。一度のチンで、7~8時間は充分あったかいです。
日々の暮らしのなかで、節電のアイデアがありましたら、ぜひご教示ください(^o^)!
厨子王の逆襲 〜 京極夏彦のコーナー
東北関東大震災
未曾有の天災に見舞われ二週間、いまだ大勢の方々が不自由な生活を余儀なくされていることと思います。
被災されたみなさまには、心よりお見舞いを申しあげます。
我が家もそうとう揺れましたが、書斎と書庫、水木楼は無事でした。整理途中の水木庵のもろもろは壊滅的に崩れましたが、既に八割がた復旧しています。停電はありますが、通常業務がこなせております。
個人としてできること、小説家としてできることを落ち着いて見極め、被災された方々に一日も早く笑顔が戻りますよう、微力ながらお手伝いができればと思っております。
さて、二週間前は大極宮の更新日でした。
更新記事は被災前に送っておりましたので、それをまず掲載させていただきます。
◎二週間前の記事◎
●老人小説
ついに『オジいサン』(中央公論新社)が発売になってしまいました。
特設サイトもできた模様。しかも、あの「朗読少女」が新刊発売と同時に配信。乙葉しおりさん(17)が読む益子徳一(72)。しおりファンのみなさん、ごめんなさい。
しおりさんの四倍以上齡とってます徳一さん。詳しくは、こちら。
朗読少女公式サイト
●授賞式の様子
僕が毎回必ずゲストで呼ばれるいいかげん不思議なラジオ「東京ガベージコレクション」(来期も放送延長決定……)のパーソナリティにして怪談界の暴発ミサイルマン・平山夢明さんが『ダイナー』(ポプラ社)で大藪春彦賞を受賞されたのは周知の通り。
その大藪賞と日本SF大賞の合同授賞式が行われたのでございます。
日本SF大賞の方は、『日本SF精神史』(河出書房新社)の長山靖生さんと、『ペンギン・ハイウェイ』(角川書店)の森見登美彦さんのダブル受賞。会場はおおいに賑わっておりました。
毎度選評が評判になる大藪賞でございますが、今回も馳星周さんによります愛ある選評がございまして、で、注目すべきは壇上の平山夢明。黒史朗くんや宍戸レイさん、児嶋都さんらと「こりゃ接近して見物しよう」と、ずずいと前に。わはははははははは。なんか、ちゃんとした服を着てますよ。でもって背筋伸びてますよ。ペコペコしてますよ。帽子被ってないですよ。ヘアがセットされてますよ(本人曰く「稲川淳二風味にしてみました」)。都合12回もお辞儀しましたよ。あ、挨拶が……普通ですよ! でもって、見物している僕となぜか目を合わせません!
いやあ平山さん、立派に「ちゃんとした」授賞式をこなしましたね。偉かったですね。
とかいっているうちに二次会。僕は安寿姫とふたりで隅のほうにいたんですが、乾杯の挨拶を拝命いたしまして、まあ「作品は素晴らしいが著者はいかがなものか」的なことをさわり程度に軽く語った訳ですが、その後、次から次へと現れては、平山夢明にお祝いならぬ攻撃を仕掛ける偉い方々がまあスゴイこと。
今野敏、大沢在昌、志水辰夫、真保裕一、馳星周、逢坂剛、柴田哲孝、福澤徹三、道尾秀介、宮部みゆき(敬称略。もっといらしたかもしれません)という超豪華な面々が、異口同音に受賞者を責め立てるというあり得ない二次会。庇わない編集者たち! 「おかしくないですか? 授賞式の二次会ってこういうものですか?」と悶絶する受賞者。そこに北方謙三&本谷有希子「ダイナー推薦文」コンビがペアで登場、さらにゴリゴリ責め立てるという地獄絵図。でもって東雅夫幽編集長がやや持ち上げたかな、と思いきや、真藤順丈、黒史朗、松村進吉という弟子筋にさらに落とされる師匠・平山。揚げ句の果てに北方・大沢両大明神の御前にて「年間最低三冊の単著を五年間続けて出すこと」という約束をさせられるという始末。わはははははは。書け! 書くんだ夢。
田辺青蛙・円城塔ご夫妻や、柴田よしきさん、須賀しのぶさんもいらっしゃってました。で、ガベージのスタッフK&Hが、なぜか録音機材を持っていましたよ。
〆は「超怖」の先輩にして大藪賞の先行受賞者でもある樋口明雄さんのご挨拶でした。
いやあ、それなりに長く生きてきましたが、四面楚歌状態というのは実際にあるんですねえ。ほんとうにあった呪いの四面楚歌。
三次会はさらに砕けて、もう呉越同舟でしたが。
●講談と落語
新潮エンターテインメント大賞を受賞した講談師・神田茜さんの『女子芸人』(新潮社)発刊を記念した催しがございました。題して紀伊國屋ホール新宿セミナー「女子芸人VS男子芸人」。
北村薫さんにお誘いいただきまして、安寿姫とともにお邪魔させていただきました。ゲストは柳家喬太郎さん。お二人の対談、落語、講談の三部構成。
喬太郎さんは抱腹絶倒の枕に特別芸付きの大サービス。神田さんも新作講談三連発。高座を楽しんだ後は小説でも楽しめるという素敵な趣向でございました。
●豆腐小僧の取材
『豆腐小僧双六道中おやすみ』『豆富小僧』『豆腐小僧その他』(角川書店)発売に当たって取材をいくつか受けました。受けたのはいいんですが、最初の取材がメディアファクトリーで、担当がRで、なぜかRが取材中にやにやしていて、取材後に写真撮影があって、まあ立派な日本旅館の中庭で、ふつうに撮るのかなと思ったら、お盆を持たされて、しかも豆腐(ほんもの)を載せられました。なんじゃこりゃあ。
その後、次号の『怪』会議なんかがあったわけですが、角川で僕がマジメに会議をしている最中に、メディアファクトリーに戻って豆腐小僧ならぬ豆腐おやじである僕の写真をツイッターにあげて笑うR。がっかりしますね。
◎その後のあれこれ◎
取材や催事など、中止になったものも多くありましたが、予定通り行われたものもありました。
●平山夢明プレゼンツ・東京ガベージコレクションの収録がありました。ゲストは真藤順丈さん。節電のために小さなスタジオで行われました。
●『オジいサン』(中央公論新社)にサインをさせていただきました。
●『オジいサン』『豆腐小僧双六道中おやすみ』(角川書店)刊行に関する読売新聞のインタビューを受けました。
●BS11「ベストセラーBOOK TV」の収録がありました。
『豆腐小僧双六道中おやすみ』『後巷説百物語』などについてお話をさせていただきました。
●角川文庫『豆腐小僧その他』が、ほぼ終了しました。ジュブナイル(一部加筆)に加えて狂言台本、落語台本が併録されています。
●クトゥルー神話を題材にした企画展「邪神宮」の詳細が決定した模様。ぼくは絵と書を提出いたしました。豪華執筆陣による書き下ろし小説掲載の図録『邪神宮』(学研)も出版されます。
●荒井良さんが、今回の地震で被災された地域へのチャリティーとして、作品集『化けものつづら』(木耳社)サイン本の販売を行われます。詳細はこちら。
荒井良・張り子の仕事
編集者Sのウラ情報
お見舞い申し上げます。
今回被害にあわれた皆様に心からのお見舞いを申し上げます。
今回の地震では多くの書店さんも被害にあわれています。「大極 宮フェア」参加書店リストを見直してみると当該地域でも多くのお店にご参加いただいておりました。ただただご無事をお祈りするのみですが、やはり流失してしまったお店は何軒かあるようです。津波の被害は免れたとしても、書籍が店内に散乱したり、スプリンクラーの誤作動で水濡れしてしまったりで甚大な被害がでているようです。それでも何店かのHPをみてみると営業を再開しているところもあるようで、その努力には頭がさがります。
いまは読書どころではないでしょうが、いつか本が必要とされる時がくると信じています。漫画週刊誌を心待ちにしているお子さんもいらっしゃるでしょう。
書店員の皆さん、頑張ってください。
そんな中ですが、厨子王原作のアニメ『豆富小僧』(映画タイトルは豆富)がGW公開予定です。原作はいうまでもなく「豆腐小僧双六道中ふりだし」(角川文庫既刊)。公開にあわせ4月2日に厨子王書き下ろしの「豆富小僧」(角川つばさ文庫)、25日には「豆腐小僧その他」(角川文庫)が発売されます。「豆富小僧」は映画公開にあわせて書き下ろしたオリジナル・ストーリー。「豆腐小僧その他」はつばさ版の「豆富小僧」に狂言、落語などの関連作品を収録したものです。そのほか新作「豆腐小僧双六道中おやすみ」もでます。よろしくお願いします。
ノリノリ編集後記
東北関東大震災
東北関東大震災で被災された皆さまに対しまして、心よりお見舞い申し上げます。
そしてここ「大極宮」は、今週からいつものように「週刊大極宮」を読者の皆さまにお届けいたします。
その読者の皆さまからは、お休み期間中、作家およびスタッフを心配してくださるメールをたくさんいただきました。どうもありがとうございました。おかげさまで作家もスタッフもとくべつな被害はなく、今はいつものように仕事ができております。
震災は、この「いつものように」を多くの人々から奪っていったわけですが……被災地の一日も早い復興を心から願うばかりです。
「大極宮」でも、なにかお役に立てることを考えたいと思います。
(震災があった日、徒歩で六本木から練馬まで帰りました。でっ、着いたときには電車が動きだしていて、ちょっと複雑な気分でした…ノリ)