大沢在昌・京極夏彦・宮部みゆき公式ホームページ『大極宮』
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- 第416号 -
2009/10/02
燃えよ山椒大夫 〜 大沢在昌のコーナー
乱歩賞
「第55回江戸川乱歩賞」受賞式に行ってまいりました。
オイラは選考委員(今回が最後)なので壇上で挨拶や選評を聴いたのですが、これがなかなか見ごたえ聴きごたえのある内容。
まず東野理事長が、「自分は乱歩賞出身作家として初めての理事長である」と挨拶をはじめた。この事実は意外なのですが、中島河太郎さんの場合は作家ではなく評論家だったので、そういう意味では東野さんが乱歩賞を受賞した作家として最初の理事長になる。
そして東野理事長はつづけて、「江戸川乱歩賞というのは、それほどたいした賞ではありません」とイッパツかました。「これは他の歴代理事長はけっして言えないセリフだ」という前置きがあってのものだが…つまりそれはどういう意味かと言うと、乱歩賞だけに満足せず、次々ともっと良い作品を書いて、推理作家協会賞をはじめとする他の賞も獲ってほしいというエールなのです。
でっ、それに対し…こんどは選考委員の内田康夫さんが、「自分はウン十年前、この江戸川乱歩賞に応募して落選した経験をもっています。たいしたことがないと理事長に言われる乱歩賞を落選した自分が、今はここでこうして乱歩賞の選考委員をやっているというのも奇妙なもので…縁を感じます」と挨拶。
なんだか火花バチバチって感じ…(笑)。
また、受賞者挨拶に立った遠藤武文さんは、そうとう緊張していたと思うのですが、受賞の言葉に続いて受賞後第一作の構想まで話しだして…。さらに今回の受賞作『プリズン・トリック』と内容がつながっている面があるので、ぜひ受賞作を読んでから受賞後第一作の小説も読んでくださいと…なんともアッパレな前宣伝までするという度胸のよさを見せた。
かつてこんな破天荒な受賞式はなかったのではないだろうか。オイラが壇上で大笑いをしているのも可笑しかったと、あとで編集者に言われました。
受賞式のあとは、歴代の乱歩賞受賞者や協会関係者、ならびに講談社の方々が集まる二次会によばれ、いろいろと話をしました。
やはり乱歩賞というのはミステリー新人賞の最高峰であるので、これからもすぐれた受賞作を輩出してほしいし、受賞者の皆さんにはその名に恥じない作品を書き続けていただきたいと願う。
すでに日本推理作家協会理事長を退任、今回で乱歩賞選考委員の役目も終えたので、なんとなくひと区切りついたという感じ。肩の荷をおろしたような…さびしいような気分です。
と言いつつ…二次会のあとは10人ぐらいで六本木に流れ、深夜までワイワイと騒いだのでありました。
安寿のがまぐち 〜 宮部みゆきのコーナー
ゲーム女の生きる道
何かこう、寄るトシナミというか、よろず疲れやすくなっていてゲームも休止中。そうするとここに書くことがなくって、お休みばっかりですみませんm(_ _)m 私はものすごく単調な生活をしているヒトなので、ゲームライフがないとネタもないんです(汗)。
作家もいろいろで、エネルギッシュに様々な場で活躍し、交友関係の広いヒトもいれば、私みたいなナマケモノ系もいるわけです。。。
なのですが。
大森望さんの『狂乱西葛西日記 20世紀remix』を読んでいたら、少なくとも20世紀中の宮部は、今よりは活発だったということが判明しました。ちゃんと「登場人物表」に出てくるし(^^)。
大森さんと宮部は同い歳なので、この日記でカバーされている1995年〜2000年というのは、35歳から40歳まででして、フツーなら立派な中年ですが、宮部の体感的には、このころが青春時代だったのです。
いやもう、だからホントに懐かしくて楽しくて、読みふけってしまいました(^o^)♪
ナマケモノの私は日記もつけてないので、同時代に大森さんみたいなマメなヒトがいてくれると助かります。思い出を保存してもらえますからね。
そうそう。。。SF大賞の二次会に、庵野監督が来てくださったんですよね。。。♪
そうそう。。。大森さんも書いてるとおり、このころは寄ると触ると歌ってた♪
そうそう。。。『理由』で直木賞決定の日、宮部はものもらいで目が腫れてた。。。
そうそう。。。コミケに行きました。暑かったけど、私もコスプレしたかった。。。
そうそう。。。このころの京極さんは、平均睡眠時間2〜3時間で、インタビューと電話の応対に追われて声がかれちゃって、筆談してたこともあったっけ。。。
何から何まで懐かしいなあ。。。
ほとんど縁側の隠居のような気持ち(^^)。
それにしても大森さんの活動ぶりはすさまじく、それは今でも変わってない感じですから、宮部も老け込んでばかりもいられないのですが、まあ、そこはねえ、個体差で(と、完全にへっぴり腰)。
21世紀編も、ぜひ本にしていただきたいです♪
という、この文章を書いている今は30日の夕方で、江戸川乱歩賞のパーティの真っ最中であります。パーティ出席率激減の宮部はサボっているわけですが(だって腰がね)、今年の受賞作の『プリズン・トリック』は読みました。発売日に買って読みました!
だってねえ、あの広告とあのコピーを見たら、そりゃ本屋さんに走って行きますよねえ。乱歩賞史上最強のコピーでしょう。うっへっへ♪ もちろん本編のトリックにも充分驚きましたし、ホント、すぐ再読しちゃいました。
で、選評を読むと、落選した『七年誘拐』という作品も読みたくなりました。新人賞の選評にはそういう効果もあり、落選した作品も、意外と注目されていたりするものです。
私自身、新人賞の最終候補作としてお預かりして読んで、受賞へと推し切ることはできなかったけれど、忘れずにいる作品がいくつもあります。乱歩賞の『機械室』とか、ホラ・サスの『魚神』とか(昨年の小説すばる新人賞受賞作・千早茜さんの秀作『魚神』とはまったく別の作品です。インスマス系のゆかしいホラーで、ものごっつく怖かった)、横正賞の『稜線にキスゲは咲いたか』とか。
その後、作者が別の筆名や別の作品でデビューされる場合もあり、それがわかると、「お! やったやった!」と、嬉しいものでありますよ(^^)。
厨子王の逆襲 〜 京極夏彦のコーナー
◎今週の化け大◎
化け大協力イヴェント「南の精霊展ファイナル」が鶴ヶ島にておこなわれました。
「お化け大学校と鶴ヶ島、いったいどういう関係があるの?」とお思いの方もいらっしゃるでしょう。
埼玉県鶴ヶ島市は、美術蒐集家の今泉隆平氏(故人)から、パプアニューギニアを中心としたオセアニアの民族造型美術品を譲り受けました。
その数、何と1725点。現在国外持ち出し禁止になっている独立前に作られた作品を多数含む、実に貴重な、そして魅力的なものばかりです。
これらを散逸させてしまうことは大いなる文化的損失であると考えた鶴ヶ島市は、これまでずっと保管・管理を続けてきました。
のみならず、ボランティア団体であるポリトライブの方々を中心にして、パプアニューギニアとの文化交流や展覧会、ワークショップなどを地域ぐるみで行なわれていたわけであります。
南方文化をこよなく愛する水木しげる総長も、ポリトライブのみなさんの活動に対し、大いなる敬意を表しておられました。
かくいう僕も、昨年荒俣宏さんがホストを務められるテレビ番組収録の際に(第359号参照)、会長である中川晶一郎さんをはじめとするポリトライブの方々とご一緒させていただきまして、収蔵品の一分を見せていただいたり、演奏を聴かせていただいたりしまして、いたく感銘を受けたわけであります。
そんなこんなで、何かとご縁があったわけでありまして。
ところが。
これだけの所蔵品を保管・管理するには、たいへんなコストがかかるわけであります。ポリトライブの方々や地域の人々も財政を賄うべく日々努力を重ねて来られたようです。
そんなさなか、中川さんが昨年、急逝されてしまいました。ご一緒させていただいたすぐ後のことだったので、僕も随分と驚きました。かつとても残念でもありました。中川さんはパプアニューギニアの唄が唄える、音楽が奏でられる、スピリットを共有できている数少ない方だったからです。
その後、鶴ヶ島の所蔵品はいくつかの大学に分割寄贈されることに決定しました。
そうした事情から、今回「ファイナル」と付けられることになったわけであります。
登場いたしますのは、パプアニューギニアから来臨したブイ・ジェネレーションの方々。そして、鶴ヶ島の龍伝説「脚折雨乞」から生まれた子どもたちのお祭り「おれらのリューダ祭」を執り行なっているリューダの子供たち。
リューダの面々は、ブイ・ジェネレーションとの交流ワークショップなどを通じて歌舞を習得、お墨付きをいただいているスゴイ子供たちなわけであります。
そんなわけで、仕事を切り上げまして鶴ヶ島に向いました。そうしたらば。
なんと総長が。
二代目・水木えつ子さんも。
グンジ事務長はまあいるとしても、ついでに年寄ウメザワ、店長C、副店長編集Rの姿も。そういえば化け大関連イヴェントだったんだ。
漁のうた、戦のダンス、恋のうた、もてなしの踊り。舞台から飛び出す迫力のリズム。楽しいことこのうえなし。
で、ブイ・ジェネレーション&リューダ&化け大の記念写真。
記念撮影中、水木総長がブイ・ジェネレーションの方に親しげに話かけられていたのがとても印象的でした。
この後、ブイ・ジェネレーションの方々はいくつかの小学校でワークショップを行われるとのこと。
収蔵品は寄贈されましたが、鶴ヶ島の人たちとパプアニューギニアの結び付きは、これからも変わらないことでしょう。
◎今週の紙媒体◎
紙メディアの現状と未来についての鼎談に呼ばれました。
参加者は、かの祖父江慎さん。そして凸版印刷のKさん。それから某講談社のOくんも。
祖父江さんはいつもオモシロイです。そしてためになります。
この様子は「プリバリ印」に掲載されます。
◎今週の乱歩賞◎
第五十五回江戸川乱歩賞授賞式・記念パーティが行 われました。
僕は今回から司会担当であります。最近司会が多い気がするのはきっと気のせいなんでしょうね。
受賞者は遠藤武文さん。受賞作は「プリズン・トリック」。
歴史ある賞でもあり、規模の大きなパーティでもありますから、粛々と進行してくださいというオーダーがありましたので、それなりに堅めの司会を心がけたのですが、東野圭吾理事長が最初からとばし気味のスピーチを炸裂させるもんで、くじけそうになりました(笑)。いろいろツッコミたくなるのを我慢ですよ。
内田康夫選考委員の選考経過発表、西村京太郎さんの乾杯ご発声と、さすがに豪華なプログラム。受賞者の遠藤さんも授賞式で次作のPRをされるという強者。
二次会では恩田陸さんや道尾秀介さんと久し振りにゆっくりお話をさせていただきました。また、駆けつけた歴代乱歩賞受賞者の方々のスピーチもございまして。みなさんそれぞれに活躍されていらっしゃるようで、心強く思った次第。
遠藤さんも諸先輩がたに負けぬよう活躍されることを期待いたします。
◎今週の告知◎
乱歩、といえば。
神奈川近代文学館開館25周年を記念した「大乱歩展」が10月3日から開催されます。
期間中には小林信彦さん、紀田順一郎さんの講演や、寺田農さんの朗読もある模様。
乱歩ファンはぜひ足をお運びくださ い。
で、もうひとつ乱歩といえば。
LED10周年記念公演「仮面舞盗会」が、10月15日から 恵比須エコー劇場で上演されます。
こちらはどういうご縁かと申しますと、その昔、拙著「魍魎の匣」「百鬼夜行・陰」が舞台化されたことがありまして(懐かしい!)、その際に出演してくださいました迫水由季さんが出演されるわけであります。魍魎の時は男役でしたが、こんどは女性の役だそうで。
乱歩の「青銅の魔人」をベースにした乱歩作品リミックスバージョンのようです。こちらも乱歩ファンはぜひ。
で、その前日10月14日からは、中野の「G*cafe(ジー・カフェ)」におきまして、日本物怪観光の天野行雄さんと、山下昇平さんの「自分達が遊ぶための適当モノオキ」(笑)である「快遊展」が行われます。
幽・怪談ノ宴の美術コンビですね。いったい何をやらかすのやら。
で、10月7日からは第4回「人・形(ひとがた)展」 が開催されます。場所は丸善・丸の内店4Fギャラリー。
こちらには荒井良さんの張り子・「宗玄火」「邪魅」「塗仏」が出品されます。
昨今、荒井作品が展示される機会も増えておりますが、「邪魅」は、たぶん初公開ではないでしょうか。ちなみに「宗玄火」は『妖怪大談義』(角川文庫)の表紙になっているアレです。
荒井さんの他、たくさんの作家さんの作品が並びます。こちらにも是非。
でもって明日は化け大特別講義「見えないモノが見えてくる 折口信夫の方法」です。講師は写真家の芳賀日出男さん。
アップルストア銀座です。入場無料。一般参加可能ですが、化け大生優先予約制(抽選)講座ですので、一般の方はお席がない場合がございます。
しかし、これは必見ですね。芳賀先生はまさに日本民俗学の生き証人。ふるってご参加を。
うーむ。その前にこの目の前の山の様なゲラをなんとかせねばなるまいぞ。うはははは。
息があったらまた来週。
編集者Sのウラ情報
香川といえば……
この更新原稿を書き上げたら、空路高松へ向かいます。高松のみなさんよろしくお願いします。
先月30日に今年の「江戸川乱歩賞」の授賞式がありました。またひとり、新人がデビューしました。受賞作「プリズン・トリック」、かなりの話題作です。ぜひお読みになって下さい。わたしもいま、読んでいます。
さて、授賞式の際、選考委員のお一人が、「賞には運も必要だ」と言われてました。乱歩賞に限らず、賞にはどうしても運不運がつきものです。ノミネートされた数作の中から一番優れたものを選ぶわけですが、年によってどうしてもレベルに差がでます。前年なら受賞できたかもしれない、ということは起こりうるわけです。
賞によっては一作受賞にこだわる賞もあります。そうなると泣く泣く落とさざるを得ないということも。そうなると落としたほうも落とされたほうもつらいでしょうね。
まるひの秘書ヒショバナシ報
今週の厨子王原稿メール件名
大極宮バカ日誌
今週も直球がきましたー。しかしバカって……(笑)。
喜ぶべき事態?
週刊大極宮の更新日であり、朗読会チケットの発売日でもある本日10月2日の12時台。サーバーが異様に重くなり、大極宮のトップページが表示されにくくなる現象が起こりました。
むむむ、これはもしかして……
会社のお昼休みにチケットを予約しようとした大極宮ラーの皆さんが、「チケットぴあ」のPコード確認に殺到したせいかも??? と、スタッフの間ではものすごい希望的な解釈が飛びかっておりました。そうだといいですなあ(祈)。
ちなみにお昼休みが終わった13時以降は、ホームページは正常に戻っていますー。
ノリノリ編集後記
チケット発売中!
自作朗読会リーディングカンパニーvol.8のチケットが発売になりました。
今回はこれまでと構成を少し変えて、ソロの朗読がなくなりいきなり3人共演の朗読となります。演目はお伝えしましたとおり「ルパン三世」!
各自が担当する役もこれまで以上に多く、3人それぞれがレインボーボイスを駆使することになります…(笑)。終演後のトーク時間がちょっと長めにとれそうなので、そのあたりの苦労話もいろいろ聞けるのではないでしょうか。
休憩をはさんで約2時間の公演、たっぷりお楽しみいただけると思います。皆さま、ぜひお越しくださいませ。
(愛馬ウインベルセルク号、6着で引退の危機!…一口馬主ノリ)