第13回 (2008/4/11)
どすこーい!
「闇討ち待ち伏せ騙し討ち、逃げる誤魔化す寝込みを襲う、卑怯未練の臆病侍たあ、俺のことだと、相手やっつけてから名乗りを上げる」
『どすこい(仮)』 京極夏彦
単行本/集英社 … P271
 時代劇で勧善懲悪型のヒーローの対極を行くタイプの売り文句として最高です。悪にもなりきれず、正義の味方には絶対なれない、でも侍としての無意味な意地に固執する、イメージが脳裏に浮かびます。
 この殺し文句だけでドラマなら大ヒットしそうです。
シャイン 35歳 男性 愛知県

コメント爺爺のコメント 「どすこい」からの最初の投稿ありがとう!
「どすこい」には笑えるセリフが満載なんじゃが、それにしてもこのセリフは最上級(?)の卑怯な手口を惜しげもなく盛り込んどるなぁ。テレビの深夜枠で、脱力系時代劇としてやってほしい! と爺も切に願う…
 でも、ワシ早寝だから見られないか。

 明日のことを思い煩うことなかれ、だ。
 天の川の流れつくところが何処かなんて、いったい誰に知ることができる?運命も未来の出来事もそれと同じようなものだ。行くべきところに行き着く。だからそれまでは、流れのままに気楽にしていこう。
 それで充分、俺達は幸せなのだから。
『ステップファザー・ステップ』 宮部みゆき
講談社文庫 … P344
 好きというか、最後の「俺達」を「私」に置き換えれば私の座右の銘。
 今が楽しけりゃいいの。なるようになるんだもの。 何か起きたらその時考える。
 私が良く言うセリフです。
青い鳥  27歳 女性 東京都

コメント爺 爺のコメント そういう考え方もあるのじゃよな。
  ただ、明日、明後日、また未来の自分を思い描く事で、 自分自身をさらなる高みへと導いていってくれる事もあったりする事もあるのじゃ。
  とはいいつつも、なるようにしかならんもんじゃしな。 ワシも今が楽しいのが、一番じゃ(笑)。

 なんでこの娘はこんなこと言うんだろう。こんな娘、俺の時代にはきっといやしない。ひとりだっているもんか。 もう二度と巡り会えるもんか。
『蒲生邸事件』 宮部みゆき
文春文庫 … P626
 ふきのやさしさに思った孝史のこの言葉が自分とダブってジーンときました。ふきちゃんはやさしい♪
 はたしてこんな娘に僕は出会えるのかしら。。。
worldnike 17歳 男性 愛媛県

コメント爺  爺のコメント 喝!!じゃ〜〜。
 物語に登場する人物に思いをよせるのは大いに結構。
 じゃがworldnikeさん、弱気は禁物じゃよ。
 爺もふきちゃんが大好き。きっと平成のふきちゃんに、worldnikeさんが出会えますように…

「私はもう一生泣きませぬ。泣いては己が立ち行かぬ。こうなった以上はもう一度、己の居場所を探します」
『絡新婦の理』 京極夏彦
講談社文庫 … P25
 後に「それが—絡新婦の理ですもの」で結ぶこのセリフは、当時まさに自分の居場所について悩んだ頃にしっかりと心に刻まれた言葉でした。
 最初に読んだときは「京極といきなり対峙してるから犯人? 犯人っぽくないなぁ!? 誰だろう、素敵」とすっかり惚れました。
 最後まで読みきってからまた冒頭から読み、重ねて衝撃を受けました。もう何度か読み返してみたいと思っています。
呉 25歳 女性 愛知県

コメント爺 爺のコメント かっこいいセリフじゃな。最後まで読んだあとは必ずワシも最初に戻ってぐるぐる読んどるぞ!

「君は—フェミニスト(女性崇拝者)なのか?」
「勿論僕はフェミニスト(女権拡張論者)ですよ」
『絡新婦の理』 京極夏彦
講談社ノベルス … P267
 人間とは日常的にこのようなすれ違いを演じているのかもしれない。人と人は決して分かり合えない存在なのかもしれない。
 そのような恐怖や絶望にも似た感情に襲われた。
Sonic 32歳 男性 東京都

コメント爺 爺のコメント これはよく分かるな。最初は僅かなズレがだんだん大きくなって修復不能ということもあるかもしれん。
 コミュニケーションとはかくも難しいものではあるが話せば分かると信じて生きて行きたいものじゃ。

 ドルシネアへようこそ
『ドルシネアへようこそ』 宮部みゆき
中公文庫 … P290
 落ち込みが激しくなると読み返します。モチーフがなんとなく火車を思い出すのはわたしだけ?
 でもなんとなく元気になるのは「日暮し」や「あかんべえ」などで活躍する少年少女はあまり登場しないのにうれしくなるのです。このタイトルの使い方は思わずうまい!と思いました。また元気になれる大人?の話をよませてください。
スミレ博士 44歳 男性 福岡県

コメント爺 爺のコメント スミレ博士はなんとなく「ドルシネアへようこそ」に癒されておるようじゃ。 その気持ちにめんじてとりあげたのじゃが、 出版社名やページぐらいは、きちんと書いておいてくれんかのう。 爺はこれでは癒されんぞ。
 ただ大人?の話を読みたいという気分は共感したぞ。

 私なら、私ならば——。
「普通は」
 彼女の、彼女の背中を——。
「普通はそんなことしないんだ。しかし——我慢できない時がある。〜〜時、憎いとか、恨めしいとか、そんな湿っぽい人間の感情を持っていた訳ではないんだ——」
『魍魎の匣』 京極夏彦
講談社文庫 … P722
 これは京極堂が「犯罪者に対する行き過ぎた動機の詮索」を批判し「犯罪のを引き起こすのは個人ではなく社会だ」と説き、この仕組みを妖怪の通り物に例えたあとの、関口の(人の)妖怪を垣間見る場面です。
 僕にも魔がさすような体験はたくさんあります。(実行したかは別として…)だからこの作品ではこの場面が一番僕には身近に感じられたのかも知れません。
 そして、もうひとつ僕が実感を得たのは、久保の作品『蒐集者の庭』の話でした。人の心を覗き、その暗黒の虜になってしまう …。
 魍魎がそんな風に自然と飛び火していくように、僕の中の闇が読んで行くと共に作品と同調していく…。そして最後の関口の言葉を読んだとき「あぁ、そうだね」と思えるんです。だから最後の言葉はそれだけ読むのより何千倍の意味を持ちます。
 僕は京極さんの作品には推理やミステリーなどを吹き飛ばす無数の方面からのアプローチがあると考えています。
絡んだストロー 15歳 男性 東京都

コメント爺 爺のコメント  確かに魔がさす、ということは心情としてあるじゃろう。それを押しとどめるのが人。考え踏みとどまれる大人になって欲しいものじゃ。

「お前たち二人が、私と母さんといるときに、お前たちにだけしか分からない無言のサインで何かを通じ合わせているとき、どちらか一方にしか話してないはずのことをいつの間にかもう一人も知っていることに気づくとき、私は本当に幸せだった」
『パーフェクト・ブルー』 宮部みゆき
創元推理文庫 … P337
  事件の真相が明らかになったときの、このセリフ。哀しい中にも温かい気持ちが込み上げて、より切ない…。
 名ゼリフという単語に真っ先に思い出したのがこのシーンでした。
 初めて読んだ宮部さんの本がこの『パーフェクト・ブルー』で、これで私はすっかり虜、宮部街道まっしぐら。
 好きなセリフはまだまだあるのでまた次回。
ぺんきち 30歳 女性 兵庫県

コメント爺 爺のコメント 哀しくて温かくて切ない、まさに親の愛が集約されている名ゼリフじゃのう。この場面にはワシも胸がしめつけられたわい。
 ぺんきちさん、たくさんセリフを送ってきてくれてありがとう。これからもどんどん頼むぞ。

 領った。領ったぞ。
 生きるも独り。死ぬも独り、
 ならば生きるの死ぬのに変わりはないぞ。
 生きていようが死んでいようが汝我が妻、我汝が夫。
『嗤う伊右衛門』 京極夏彦
角川文庫 … P359
 すれ違いばかりで離れ離れになってしまった伊右衛門と岩が、死によってようやく悟りを啓き、深いところで結ばれたのかなぁと思うと切なくなるセリフでした。
大島 20歳 女性 愛知県

コメント爺 爺のコメント まさにこの瞬間ようやく二人は結び合えたんじゃな。
 この伊右衛門の悟りがあってこそ、いつまでも二人は結ばれ続けるのじゃな。
 切ないラブストーリーじゃのう。

「本当のことは、どんなに遠くへ捨てられても、いつかは必ず帰り道を見つけて帰ってくるものだから。だからいいよ。俺は俺で——これから自分のこと、考えるから」
『模倣犯』 宮部みゆき
単行本(下巻)/小学館 … P61
 勿論これは直前で有馬さんが網川へ対し云ったのを塚田君がパクッて樋口めぐみへいった台詞です。主人公が悪役へ決め台詞を吐くなんて「ドラマじゃ無いんだから」と反感を持つ一方で、映画やTV、ゲームに感動で涙し、共感する今の我々の世代だからこそ「在りえるかも…」とも感じる。
 それこそあるアニメの台詞で「今の私が絶対じゃないわ。後で間違いに気付き、後悔する。私はその繰り返しだった。ヌカ喜びと自己嫌悪を重ねるだけ。でも、その度に前に進めた気がする」なんて言ってて、塚田君はこの時までめぐみから、現実から、自分の罪から唯ひたすら逃げていた訳だけど、このとき漸くしっかり向き合って新しい第一歩を踏み出すために足を上げることができたんじゃないかなと思う。
 今NEETである僕もそんな一歩を踏み出せたらなぁ。
忌避 25歳 男性 神奈川県

コメント爺 爺のコメント 第10回でも登場したセリフじゃな。同じセリフでも、読む人によってそれぞれの感じ方があって、非常に興味深いのう。
 このセリフを送ってきてくれたことで、忌避さんはもうその一歩を踏み出しているとワシは思うぞ。あとはほんの少しの勇気じゃ。

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