第10回 (2007/9/7)
拙僧、三連発!
「拙僧が——殺めたのだ」
『鉄鼠の檻』 京極夏彦
講談社文庫 … P1341
 心に響きました。
HY 19歳 女性 栃木県

コメント爺 爺のコメント 1341ページとは文庫の厚さじゃないよのう。ワシは読んでて手が疲れて震えてしもうた。仕方ないから枕にして昼寝じゃ。それはともかく何人もの人がこのセリフには感動したようじゃな。短いコメントが全てを物語っているように京極堂の万感の思いが胸に迫るのじゃろう。

 鈴子を連れ戻せなかった悔い、今までになくなった人たちへの手向けの言葉のように思えて、とても切なくて泣けてきます。
 それだけでなく、この台詞だけで墨絵のような雪景色のモノクロームの風景がフッと浮かんで来ます。
 たった一言に感情と景色を織り交ぜた、名ゼリフ中の名ゼリフだと思います。
ぴよぴよ 30歳 女性 奈良県

コメント爺 爺のコメント 小説家の伝えようとした意図を超えて、たった一行から世界観をひろげていく。感受性豊かな人なんじゃろう。
 それぞれが感じとったことが全て。読み方に正解はないから小説は面白い。

 ラストに京極堂が呟いた言葉。京極堂としてではなく、ただ一人の人間、中禅寺秋彦としての言葉に思え、何処か物悲しく、切なさを感じた。
うねま 28歳 女性 埼玉県

コメント爺 爺のコメント 自分の未熟さを悔いているのかのう。出来ることは精一杯やったけれども……。そんな嘆きを感じ取ったのじゃろうか。だけど人はみんなみんなどこか未熟なんじゃよ、きっと。

「誰も——教えてくれなかったんだな」
『陰摩羅鬼の瑕』 京極夏彦
講談社ノベルス … P739
 伊庭が発したこの一言で何故かこみ上げてくる物がありました。
 この何の変哲もない一言の中には、犯人に対する全ての感情が込められているんだと思います。読み返すたびにやりきれないというか……。
「しょうがないよ」と、言ってあげたくなります。
七樹 24歳 女性 埼玉県

コメント爺 爺のコメント 優しさのこもったコメントじゃな。世の中しょうがないですむことばかりではないんじゃが、時として過ちを犯すのもまた人なんじゃな。

「そうかあ」
 榎木津はふにゃりと笑った。
『百器徒然袋—雨』 京極夏彦
講談社文庫 … P227
 読んだ瞬間、「あぁ可愛いなぁ」と微笑ましい気分になりました。
 榎さんはいつもかっこいいけれど、同じくらい可愛いところもあって、人間としてとても憧れます。
 きっと榎さんは、誰よりも純粋で、憎しみによる暴力は嫌いなんだと思います。
 木場修とする子どものケンカのような暴力は、そこに信頼関係があったりするからいいんでしょうね。
 一般的に理解されることの少ない榎さんですが、きっと誰よりも心が美しく、正しい生き方をしているんでしょう。
 みんなが榎さんみたいだったらいいのになぁ。
刻乃紅狼 17歳 女性 愛知県

コメント爺 爺のコメント みんなが榎木津だったら……それはそれで怖いゾ。あ、そういうこと言ってるんじゃなくて?

「えっと、いろいろ大変だと思いますけど、元気だしてくださいね。正しいことは、時間かかっても、必ず正しいって証明できますから」
『名もなき毒』 宮部みゆき
単行本/幻冬舎 … P233
 ゴンちゃんが、美知香に向けて言った言葉ですが、何気ないのに何だかものすごく印象に残ってしまいました。
 彼女の純粋さ故に口にできる言葉だろうし、そのまっすぐさ故に嫌味なく相手に伝わるのだろうと思いました。歳とともに斜に構えて物事を見たり、意見をしたりとなかなかゴンちゃんのように素直な気持ちで人を励ますということができなくなってきてしまいました今日この頃ですが、彼女を見習ってまっすぐに人を励ませるよう努力しなきゃと反省しました。
きらら 30歳 女性 茨城県

コメント爺 爺のコメント 人を励ますってのは、難しいのぅ。励ましたつもりが、その言葉でまた相手を傷つけてしまったり、落ち込ませてしまったり、ということもあったり…。
 落ち込んでいる時には、このゴンちゃんみたいにさらっと、言ってもらえると元気が出るのかもしれんの。人を優しい気持ちにさせるセリフじゃの。

「幸せというのは、いつだって点なんです。なかなか線には、ならない。それは真実も同じですがね」
『クロスファイア』 宮部みゆき
カッパノベルス(下巻) … P276
 う〜ん…納得!!
リコピン 53歳 女性 山梨県

コメント爺 爺のコメント ワシも納得じゃ。その幸せの点、真実の点を見逃しがちな人も多い気がするのぅ。
 最近ワシが気がついた幸せの点は、シラスの中に小さいカニを見つけた時じゃったよ!

 ミオのためじゃない。ミオのためだと思ったら自分を欺くことになる。ミオを思う、自分のために、今、僕はここにこうしている。
(中略)
 僕は、ミオのためではなく、ミオを愛する、自分のために頑張っている。
『女王陛下のアルバイト探偵』 大沢在昌
廣済堂文庫 … P247
 実はこのセリフ(というかモノローグ?)は28歳の頃に読みました、遅いよなぁ・・・文庫になってからでも五年はたってますなぁ。
 で、高校生の頃に読みたかった、と思ったものです。
 そう、それから十年経った今でも独身ナワタクシです。
 トホホ。
まつじん 38歳 男性 大阪府

コメント爺 爺のコメント まつじんさん、純愛一途な高校生ならガツンとくるセリフじゃのう。ただ中略のところが、相手に代償を求めない無償の愛を語っておるぞ、ここに愛の深遠がひそんでおるような気がするのはワシの思いこみかな。

「でもわたくしはこんなこと恥とも何とも思っていなくってよ。こんなつまらないことで傷つくような安い自尊心は持ち合わせておりませんから」
『百器徒然袋—雨』 京極夏彦
講談社ノベルス … P152
 京極先生の作品のなかでは、よく女性がかっこ良くタンカを切ってくれますが、その中でもこのセリフは一番のお気に入りです。
 結婚式をめちゃくちゃにされて、挙句にダンナになろうとしていた男が「強姦魔」だったことがばれて…花嫁としてはかなり悲惨な状況なのに、自分を見失わずにこんなセリフが言えるなんて、このお嬢さんは強い。そして賢い。あこがれます。
ぷき 39歳 女性 山口県

コメント爺 爺のコメント こんなことって人それぞれじゃが、確かにこの美弥子のセリフはカッコいいわい。ぶきさんがあこがれるのも無理はないな。

「尋くがな、あんた女権拡張論者か?」
「そう云う呼び方も括り方も正確ではありません」
「悪いが他に言葉を知らねえ。今の言葉だって、二三日前に覚えたんだよ俺は」
「正直な人です。賢振らぬところは非常に好感を持ちます」
『絡新婦の理』 京極夏彦
講談社文庫 … P638
 私も凄く好感持ちましたっ!
 普通なら葵に反論したくなる所なのに見栄を張らなくて木場修とっても素敵。まさか葵に木場修が好感を持たれるなんて思っていなかったので、磯部は思惑がはずれて悔しがっているかと思うと笑いがこぼれてしまいました。
 葵が去り際に「中中宜しいですわ」と言われてそっぽ向く木場もらしくて好きです。
静佳 19歳 女性 京都府

コメント爺 爺のコメント 木場修が時たま見せるこうゆうところ。女心をくすぐるんじゃろうなぁ。ワシの場合は知らないことでも知ってるふりして、いつも婆さんに訂正されちょるよ。ははは。
 しかし、葵という人もなかなかの人物じゃなー。男はこういう強い女性が、以外と好きなんじゃ。……おっと、婆さんに聞かれて今以上強くなられても困るわい!

「嘘をついて気が済むなら、つけよ。俺は平気だ。自分のしたことは、自分でちゃんとわかってるから。それに──」
「それに?」
「本当のことは、どんなに遠くへ捨てられても、いつかは必ず帰り道を見つけて帰ってくるものだから。だからいいよ。俺は俺で──これから自分のこと、考えるから」
『模倣犯』 宮部みゆき
新潮文庫(第5巻) … P490
『模倣犯』の中で、一、二を争う強烈な人物だった樋口めぐみ。私はこの小説の前半を読んでいる間、真一の気持ちと同化して、めぐみを恐れたり憎んだりしていました。
 だからこそ、この場面で静かに向かい合う二人の会話は染み入ります。
 自分の無茶苦茶な願望を遂げるためのめぐみの嘘や言いがかりに振り回され続けてきた真一が、最後、こんなふうに「嘘」と「本当のこと」について語る。彼のこの覚悟が、とても切なく、それでも力強く感じます。
レイ 23歳 女性 千葉県

コメント爺 爺のコメント 樋口めぐみは強烈なキャラだったのう。ワシも怖かったー。そのめぐみにここまで言えるようになるとは、真一もたいしたもんだわい。"強くなる"ということを裏返せば、それだけたくさん辛い思いをしてきたということじゃからなあ。真一の気持ちと同化したレイさんだからこそ、このセリフの意味をしっかりと感じてくれたんじゃろう。

 鳥口は流石に神妙な顔をしたが、しかしそれは何秒と持たず、すぐにだらしない表情になって、いつもと同じ剽軽な声で、
「うひゃあ、あれは僕が、原稿を」
 と云って、少し間を置き、
「袋から出したんです」
 と結んだ。
『魍魎の匣』 京極夏彦
講談社文庫 … P129
 後からじわじわきます。
 トリちゃんのすべてがあらわれている気がします。
m&m 19歳 女性 兵庫県

コメント爺 爺のコメント まったく後を引くセリフじゃなあ。これを読んで、いつまでもニヤニヤしてしまったよ。セリフの間が"じわじわ感"を増幅させているのかのう。コトワザの言い間違いも笑えて好きじゃが、m&mさんが切り取ってくれたこのシーンは、まさに鳥口を象徴しているとワシも思ったぞい。ああ、それにしてもじわじわ可笑しいわい!

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