第28回 (2011/8/8)
京極夏彦特集なのじゃ
「まあ、お互い様ですわ。ウザイと思ったり、思わなかったり。そのくらいで人間丁度いいんじゃないですかなあ。憎んだり馬鹿にしたりするのとは違いますよ」
『オジいサン』 京極夏彦
中央公論社/単行本 … P104
 権藤さんの、このセリフで、心が安らぎました。
 私事ですが、日頃他人に対して、ついウザイと思ったり、それによる自責の念にかられて後から苦しんだりする私にとって、このセリフは、まさに、救いの一言ともいえるものでした。
 気を楽にもつ事も、大事な事だと、気づかされた気がします。
大豆油 14歳 女性 東京都

コメント爺爺のコメント  世の中は理不尽なものじゃと割り切れれば、大豆油さんのように楽になれるのじゃ。
 ヤジロベエのように、気持ちがあっちに傾いたりこっちに揺れたりしても、自分の立ち位置がぶれなければいいのじゃよ。

「親は生まれた時から載ってる荷物だが、家内は自分で選んだ荷物だし、同時に僕は相手に選ばれた荷物だ。放したくないし放されたくない」
『邪魅の雫』 京極夏彦
講談社文庫 … P639
 関口せんせの言葉です。
 川赤子とか読んでると、本当は雪絵さんのこと重荷に思ってるんじゃないかなぁ、本当は早くこの重さから逃げ出したい、離れたいと思ってるんじゃないかな、とか雪絵さんがかわいそうに思ってました。雪絵さんはこんなに関口せんせに尽くしてるのに…とか。
 でも、この言葉で、関口せんせも雪絵さんのこと必要としてるんだなぁ、想ってるんだなって伝わってきました。
 私もそんな風に思える"荷物"を早く見つけたいなぁ、って思います。
ぐみ 17歳 女性 宮城県

コメント爺 爺のコメント 大切な荷物だからこそ、なんじゃな。そんな荷物がそこらに転がっているわけはないな。きっと赤い糸で結ばれていたんじゃろう。まあ、偶然つまずいた荷物がそうかもしれんし、縁とはふしぎなもんじゃ。早く運命の荷物に出会えることを祈っておるぞ。

「この人は、この大根を丹精込めて作っている近隣の農夫の下金君」
「おろしがね?」
 ——って誰だ?
「そう。だから今頼めば後で届けてくれると思うけど——いいよね、下金君。まだ沢山あるでしょ」
「あ——あ、ハイ、そのまあ——」
 どうして僕はいつも偽名なのだ。
『百器徒然袋—雨』 京極夏彦
講談社文庫 … P683〜684
 伊佐間と本島のやり取り。
 最後の本島の言葉に、本島の切なさを感じた。
 本名で呼ばれない、その切なさを——。
苦夢利 12歳 男性 神奈川県

コメント爺 爺のコメント 存在感がうすいのかのう。爺もあるぞ、何度も会っているのに覚えてもらえない。この世の中、自己アピールできる人間が強いんじゃ。鬱陶しいこともあるがの。

 死んだ人のことを誰も知らないじゃないかよと榎木津は云った。
「馬鹿が」
『陰摩羅鬼の瑕』 京極夏彦
講談社ノベルス … P593
 いつも暴れて壊して滅茶苦茶やってるエノさんがこんなにやり場のない怒りを吐き棄てるなんて……。凄く哀しくなりました。
 結局薫子さんのこと一番心配してたのはエノさんなのに、本当に何も出来ず易々と殺されてしまった。
 この「馬鹿が」に今までのすべてが詰まってるんだろうなと思います。
 あと今気付いたんですけど、榎木津って一発変換出来ないんですね(笑)。
とんじょ 14歳 女性 大阪府

コメント爺 爺のコメント 『榎木津』。 爺の機械(笑)じゃと、「榎木」と「津」に分かれるけど一発で変換されるぞ。もしかしてその昔に単語登録したんじゃったか…??
 名ゼリフへのコメントそっちのけで、榎木津変換問題に喰いつく爺であった。

「豆腐小僧にござりまする」
『豆腐小僧双六道中ふりだし』 京極夏彦
講談社/単行本 … P644
 その場が混乱を極め、どうにもならない状況に陥ったときにいきなり現れて鎮めてしまう。
 まるで中善寺秋彦か水戸黄門みたいな役割を「ただ出てくるだけ」でほぼ行ってしまう豆腐小僧の決め台詞です。
 この場面は「待ってました」という声がどこからかかかりそうなタイミングなので、それまでの役立たずっぷりを忘れてカッコ良く見えてしまうほどです。
 ただの自己紹介が決め台詞というのも、豆腐小僧というキャラクターに似合っています。
 鬼太郎や誰かさんの孫など妖怪ヒーローはたくさんいますが、戦うのではなく出てくるだけで役割が終わるというのは画期的です。
 昔も今も、豆腐小僧は出オチなんですね。
アヤカス 35歳 男性 東京都

コメント爺 爺のコメント 「自己紹介しただけで、すべて解決!」…憧れるな。

「だって病み上がりなんだろうが。それにお前さんは事件に関わる度に落ち込んで、地獄の釜の蓋ァ開けたみてェなことになンだろうがよ。あまり女房に心配かけると俺が絞めるぞ」
『陰摩羅鬼の瑕』 京極夏彦
講談社文庫 … P1199
 不器用ながらも木場修の、関君夫妻が心配で大好きだって思いが伝わります。
tsubasa 34歳 女性 愛知県

コメント爺 爺のコメント 「女房に心配かけるな」っていわないで、「心配かけると俺が絞めるぞ」ってとこがね木場修なんじゃよな、tsubasaさん。

「探偵が探偵をしていないのだから探偵の見習いの出る幕じゃないのだ。そんなことも判らないから泣きたくなるのだ。いいかオロカバカ。他人の内側を覗いたり立て直したりするような酔狂なことは、あの馬鹿本屋にでも任せておけばいいのだ」
『邪魅の雫』 京極夏彦
講談社ノベルス … P666
 益田くんへの愛がにじみ出ているようで、きゅんとしたセリフでした。榎木津さんの不器用なやさしさが感じられる気がしました。
tsubasa 34歳 女性 愛知県

コメント爺 爺のコメント  今回2度目のtsubasaさんの投稿じゃの。
 榎木津の毒舌は、ときに優しさの表れなのかのう。榎木津人気の理由のひとつかもしれないな。

「厭なら辞めりゃいいじゃん。辞めたくねーなら変えりゃいいじゃん。変わらねーなら妥協しろよ。妥協したくねーなら戦えよ。何だって出来るじゃん。何もしたくねーなら引き篭ってたっていいじゃん」
『死ねばいいのに』 京極夏彦
講談社/単行本 … P330
 評論家気取りで偉そうなことを能書きたれてる……自分自身に言わんといかんなぁ。
まつじん 42歳 男性 大阪府

コメント爺 爺のコメント 自分自身に言うには、ちとキツイ言葉じゃのー。このセリフどおりにするには、かなりの勇気がいるとみたぞ。

「邪なことをすると——死ぬよ」
『邪魅の雫』 京極夏彦
講談社文庫 … P449
 文庫の帯にもなってましたが。そうですよねえ、普通、そうなんです。
 なのに今の世の中、「よこしまなこと」をしてもなあんとも思ってない人が多いような気がするのは、なんなんでしょう。
 想像力の欠如でしょうか。道徳心の欠如でしょうか。
yuri 58歳 女性 京都府

コメント爺 爺のコメント ワシは「想像力の欠如」だと思うのじゃが、どうだろうか。

「〜真っ向切って向かい合い、踏ん張ったところで偉くはない。踏ん張って出るのは屁ぐらいだ。拙者など喰うや喰わずで屁も出ないわ」
「出やせんか」
『前巷説百物語』 京極夏彦
中央公論新社/単行本 … P120
 止めを刺された一言(笑)。
 屁って!! 山崎の旦那、屁って!!
 おかげで旦那のことが大好きになりましたww
 そしてそのあとの又市さんの「出やせんか」で更に爆笑。
 そこ聞いてしまうのか又市さん!!(笑)
 そしてそれにサラッと「出ないな」って答えちゃう旦那、男前っ!!(え、違う??)
 だけどこのくだりを男友達に朗読された時はちょっと恥ずかしかったですねぇ(笑)。
 それでも旦那が大好きです!!
市松 14歳 女性 三重県

コメント爺 爺のコメント 市松さん、元気いっぱいのコメントじゃのー。こっちまで楽しい気持ちになれたぞ。ありがとう。

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