第21回 (2009/6/26)
まったくもって暑いっ!
「いい匂い。冬の朝の匂いって好き」
『氷の森』 大沢在昌
講談社文庫 … P274
 連れ込んだミキのセリフです。
 そう、今年の夏は暑かったもんで冬が恋しい……猛暑日なんていい方を作るから余計に暑く……
 ってセリフと関係ないコメントですんません。
 でも冬が恋しいのです。(きっと冬になれば夏を恋しがるのでしょう)
まつじん 39歳 男性 大阪府

コメント爺爺のコメント  ワシも今、猛烈に冬が恋しいぞえ〜!
 まったくもって暑いっ! ゼエゼエゼエ……

「一度くらい、うるさい! って壁を蹴っとばしてやれよ」
「もう何度もやってるよ。」僕は答えた。「父さんも僕も。母さんもスリッパをぶつけたりしてるけどね。この前なんか、買ってきたばっかりの卵のカートンを投げちゃってさ」
『我らが隣人の犯罪』 宮部みゆき
文春文庫 … P22
 卵のカートンを投げつける…このセリフを読んで、「この手があったか!」と感心しました。
 腹が立つことがあって、物に当たることは結構ありますが、さすがに卵は投げたことないです。しかも、カートンで。結構ストレス解消されるかもしれません。今度、ものすごくイライラした時に試してみようかと思いました。
 でも、物にあたった後、なんかこう、虚しくなるのも事実。
 卵の場合は自分で片付けなきゃいけないし…食べ物を粗末にするのもよくないですよね…ストレスをためないのが一番ですが、現代社会ではなかなか難しいことです。
ichi 23歳 女性 アメリカ

コメント爺 爺のコメント 卵はなぁ、後始末は大変じゃよぅ。若いころ一度だけ婆さんが怒ってなぁ……後始末はワシがしたわけだけど……。
まあそんなわけで、体験者のワシから言わせてもらうと、卵だけはダメじゃよぅ。

 岩は渡さぬ。梅と——逝け。
『嗤う伊右衛門』 京極夏彦
角川文庫 … P347
 最初は、自分からはっきり行動を起さない(結婚も人任せ)、言葉も足らず(奥さんと会話もままならない)、ウジウジしている伊右衛門が苦手だったのですが、クライマックスに迫るにつれ、じわじわと自分の感情を爆発させていく伊右衛門に惚れました。
 特にこの喜兵衛に放ったセリフはたまりませんね。
 世間と関わることを避け、一人で生きていたような伊右衛門が本当に望んだの人が、岩。
 その気持ちが心底伝わってきます。
yomogi 29歳 女性 イギリス

コメント爺 爺のコメント 本当に大切だから人には渡さぬ、強い意志を感じるのう。意志を貫くのは決して楽なことではないな。
最近の爺は意志が弱くて足腰も弱い。暑さのせいかのう。困ったもんじゃ。

「悲しいやねえ、人ってェのはさあ」
『巷説百物語』 京極夏彦
角川文庫 … P511
 光に背を向け、闇に身を投じ、時には心を鬼にし御行として生きている又市さんだからこそ、余計に響いてきました。
 たった一言なのに、寂しげにやつれた背中が見えてきて泣きそうになります。
椎葉命樹 18歳 女性 岩手県

コメント爺 爺のコメント 最近、記憶がまだらに惚けてきた爺は思う。このセリフは確か、第19回にも載っていたようないないような……
「悲しいやねえ、年ってェとるのはさあ」
 いや、これも暑さのせいにしておこうかの。
 椎葉命樹さんは、お若いのに感性がするどい。「帷子辻」の顛末を受けとめての又市のセリフ、わしゃどよ〜んときたぞ。

「もしもし?聞こえてるかい? 今夜は霧じゃなくて雪だ」
 顎が震え始めた。
「聞こえてるんだろ?雪なんだ。僕にはできなかったよ。できると思ってたのに、駄目だった。わかるかい? あんたみたいにはいかなかったんだ。僕は吉武を助けちゃったよ」
 頬についた雪が溶けて流れた。
「僕にはできなかった。親父を殺したやつなのに、僕にはできなかった。殺せないよ。あんたにはわかるかい? 僕にはできなかった。笑っちゃうよ」
 丸めた拳でボックスの壁を叩きながら、守は本当に笑いだしていた。とまらなかった。
「あんたは立派だよ。狂ってるけど立派だよ。あんたは自分が正しいと思ってやったんだろ? 僕には何が正しいのかもわからないよ。なにもかも知りたくなかった。なにも知らないままでいたかった。ちきしょう、あんたを殺してやれたらどんなにいいだろう!」
『魔術はささやく』 宮部みゆき
新潮文庫 … P385
 長くなってしまったんですが、どうしても略せませんでした。
「霧じゃなくて雪だ」と言う言葉、何度も繰り返される「僕にはできなかった」、そして最後の「なにもかも知りたくなかった」。
 どの言葉も守の孤独と悲しみがせまってきて、胸をしめつけられたみたいに苦しくなります。
 復讐は正しいことなのか、ふさわしい罰を自分が与えていいのか、そしてどうすれば自分は救われるのか、深く考えさせられました。
 普段の生活の中でも、この選択肢はいつだって私達のすぐ側にあって、決断を迫っているのだろうと思います。
ありす 20歳 女性 広島県

コメント爺 爺のコメント  罪を憎んで人を憎まず、とか云うらしい。
  むんん、ありすさんのいうように、決断を迫られたらわしゃ迷いそうじゃ。

「おまえを治せて、良かったよ」
『あかんべえ』 宮部みゆき
新潮文庫(下巻) … P325
 笑い坊の人柄を示すのに、これ以上のセリフはないでしょう。不覚にも涙がこぼれてしまいました……。
ケルベロス 19歳 男性 広島県

コメント爺 爺のコメント やさしい言葉じゃな。
 心底大事に想っている相手にじゃないと、言えないセリフじゃよな。
 そのセリフを読んで涙するケルベロスさんも、やさしい方というのが伝わりますぞ。

「やあ、まだ、寝たりないかい?」
『追跡者の血統』 大沢在昌
角川文庫 … P309
 公が沢辺を探し出したときの第一声。
 こんなセリフがこういうときにでてくるなんて、気障なんだけどかっこいいです。
 その後の沢辺の返し方からも、普段の二人の雰囲気や信頼関係がにじみ出ていて、いつも思うことですが洒落ています。
 ハードボイルドなんだけど、ユーモアのある会話が大好きです。
さゆり 24歳 女性 東京都

コメント爺 爺のコメント  さゆりさんのおっしゃるとおり、信頼関係があるからこそ、こんな冗談のようなセリフが言えるんじゃろうなあ。この後の沢辺とのやりとりも最高じゃな〜。

「雷を落とせば現の嘘を夢の真に変えられるか」
『前巷説百物語』 京極夏彦
角川書店/単行本 … P403
 わたしが御燈の小右衛門に惚れた台詞です(笑)。すごくセンスのいいキメ台詞だと思うんですよね!
「現の嘘を夢の真」現実の嘘を夢の本当にするだなんて、また自信ありげに言っちゃう小右衛門さんがにくい!(笑)
 又市さんと小右衛門さんがタッグを組まなきゃ絶対できない、この二人だからできたことだと思います。
 仕掛けが大掛かりとかそういうの以前に、この出会い自体が、ものすごいことなんじゃないかな、と! 読むたびにうっとりため息をついてしまいます。
ちな 21歳 女性 三重県

コメント爺 爺のコメント 御燈の小右衛門ファンって結構多いんじゃよな。ワシもその一人じゃ。
 あの又市を前にこんなセリフを吐けるのは、巷説シリーズのフィクサー小右衛門くらいじゃよな。
 ホントにかっこよいキメ台詞じゃな。

「嫌なこと、いっぱいされたわ。何もかも嫌なことばっかりだった。家でも学校でも、どこへ行ったって同じだった。それは真実じゃないっていうの? あたしが受けた傷は偽物で、あたしがつけた傷だけが本物なの? どうしてそうなるのよ」
『名もなき毒』 宮部みゆき
幻冬舎/単行本 … P326
 自尊心には「○○ができた自分」を誇りに思うものと、「どんなにダメな自分でも大事」というものがあると思うんですが、前者に傾きすぎると「努力をしていない自分に苦しむ権利はない」とか「苦労していない自分は辛いなんて思っちゃいけない」なんて思ってしまいます。
 自分にマイナスの要因があると、××のくせに贅沢を言うな! と人から言われるし自分でも思ってしまうから、助けてくれとか傷ついたとか言えなくて、そのまま閉じ込めて悪化させてしまいます。
 この人は確かに勝手で子どもだけれど、この台詞は「もっと解かって」「誰か助けて」という悲痛な叫びに思えて、なんだかひどく悲しくなってしまいました。
りょく 22歳 女性 東京都

コメント爺 爺のコメント 身勝手のようじゃが確かに人の傷など誰にもわからない。だからこそ悲痛な叫びに耳を傾けられる人でありたいのう。

「うう、あ、あの」
「ううッ」
「うううッ」
『百器徒然袋—雨』 京極夏彦
講談社ノベルス … P458
 これすべて、関口さんのせりふです。
 私も同様の、、、状況に陥りかけた経験があるのでよーーーーーく分かります。
 確かに、このあたりの京極堂さんのしていることは、「今日の極道」ではないかと(笑)。
mononoke 44歳 男性 兵庫県

コメント爺 爺のコメント 『同様の状況になりかけた』、ですか〜。
  こんな体験、したくてもなかなかできんよ! 羨ましいなぁ。

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