第24回 (2010/3/26)
河豚よさらば
「河豚よさらば」
 と呟いた。この発言に意味がないことは確実である。
『狂骨の夢』 京極夏彦
講談社ノベルス … P37
 名言名ゼリフのたぐいというものを思い浮かべると様々なものが浮かんでは消えていくのですが、先ず最初に何故かこの台詞が頭をよぎります。
 まるで意味のない肩の力の抜ける一言。
 なのに何故か記憶に残る一言。
 私にとっては他の名言と甲乙つけがたい、名ゼリフです。
織夜 17歳 女性 兵庫県

コメント爺爺のコメント  「さらば」の語源ってなんじゃろうと、広辞苑片手に「さらばさらばさらばさら…」と頭の中でつぶやいていたら、ゲシュタルト崩壊おこしてしまったわい。
 と、意味のないコメントつけてみたりして。

「でもさ、大木毅には、僕もかなり頭にきたんだ。もうちょっと厳しいシツケが必要だと思わない?」
「それより、想像力を伸ばすことではございませんか?」
「想像力?」
「はい。他人様の迷惑をおもんぱかるのにも、想像力が要りますでしょう。わたくしはつねられれば痛い。では、あなたもきっとつねられれば痛いでしょうねと思う気持ちでございますね」
『東京下町殺人暮色』 宮部みゆき
光文社文庫 … P232
 このハナさんの言葉がとても心にしみました。
 相手を思いやれなかったり、無関心だったりすることって「想像力が足りない」からこそなんだなと思いました。嫌な事件や、いじめの問題も、根本はそこにあるんだと思いました。
 そして、私にもそんな部分があるんだろうと思います。
「想像力を伸ばす」・・・私の子育ての指針になりそうです。もちろん、私自身も相手を思いやる想像力を忘れずにいたいです。
ミーコロ 28歳 女性 愛知県

コメント爺 爺のコメント ミーコロさんのおっしゃるとおりじゃ。ちゃんと「想像力」があれば、世の事件はかなり減るんじゃないかのー。
 それはそうと「想像力を伸ばす」子育てには、読書がいいとワシは思うが、いかがかな。

「世の中は力や、いうのんは嘘や。力ばかりやない。大切なんは、いつも自分が胸張って生きられるかどうかや。たとえ力で人を圧して、胸を張ったとしても、自分で自分に胸が張れるかや。ちがうか」
『走らなあかん、夜明けまで』 大沢在昌
講談社文庫 … P227
 すでに『スタッフたちの渾身のサンプル集』にて編集者S氏により載せられていますが、このセリフを読んだときの衝撃を忘れられません。
 胸に突き刺さるようなセリフでした。
 自分で自分に胸が張れるようにがんばって生きたいと思いました。
まこと 24歳 男性 埼玉県

コメント爺 爺のコメント Sはこんなセリフを選んでおったのか。似合わんセリフを選びおって。爺ぐらいになると枯れてしまっておるが、このセリフが教えてくれているのは「自分のこころに訊いてみろ」ということじゃな。

「世界中の不幸と苦悩を纏めて背負った顔をして、そんなもの誰でも背負っているぞ! ちっとも偉くない」
『狂骨の夢』 京極夏彦
講談社文庫 … P705
 いつも榎さんの言葉には驚かされています 。
 私自身たぶん世界中の苦悩とか不幸を纏めて背負ったような気になるときがありますが誰でも背負ってるんですよね。
 ようは考えようってことでしょうか。
西日 18歳 女性 徳島県

コメント爺 爺のコメント 誰もが大なり小なり何かしら抱えておるからのう。前向きに生きてゆきたいもんじゃの。
 西日さんは18歳、まだまだいっぱい悩みなされ。

「シゲちゃん、人間って、そんなに独創的な生き物じゃないよ。みーんな何かを真似っこして生きてるんだよ」
『模倣犯』 宮部みゆき
新潮文庫(第四巻) … P312
 正直、かなり衝撃を受けたセリフです。
 ふだん、自分らしさであったり、オリジナリティーを大切にしたいと思って生活しています。
 また、音楽や絵画、小説など、それぞれの作者らしさというものが発揮されるものを聞いたり見たりするのも好きです。
 だからこそ、このセリフは衝撃でした。まさか小説のなかでこんなセリフを読もうとは・・・でも、言われてみればそうなのかもしれません。
 そして、もし、本当に独創的になってしまったら、この物語の犯人のように、人の道から外れてしまうのかもしれません。
IYO 25歳 女性 神奈川県

コメント爺 爺のコメント このセリフはすごい! と、ワシも思ったぞ。「その通り!」と認めてしまったら、今までの自分を否定するような…でも、そうなんじゃよなー。

「日下、俺は遺伝は信じない主義だ」
「蛙の子がみんな蛙になっていたら、周りじゅう蛙だらけでうるさくてかなわん。俺はただの体育の教師だから、難しいことはよくわからん。わからんが、教育なんてしち面倒くさいことを飽きもせずにやっているのは、蛙の子が犬になったり馬になったりするのを見るのが面白いからだ」
『魔術はささやく』 宮部みゆき
新潮文庫 … P216
 私は4月から教師になります。このセリフを読んだんだとき、私も子どもにこういうセリフを言える教師になりたいと思いました。
 具体的な言葉ではなく、子どもがその時必要としている言葉を自分の言葉で表現できる岩本先生のような教師になりたい、とこのセリフを見て切実に感じました。
つな 22歳 女性 広島県

コメント爺 爺のコメント スポーツの世界なんかで、二世が活躍するのは幼いころからそういう環境で教育されてきたからじゃな。子供の可能性は教育や環境で大きく左右されるのじゃ。たいへんじゃが、頑張ってくれたまえ。

「今思えばわかる。お前はこんな土地で暮らしちゃいても、ずっと街に戻りたかった。だがただ戻るのは嫌だ。お前は死に場所として街を見ていたんだ。今度の事件は、そういうお前にぴったりだったんだ。自殺したがっていたとはいわねえが、刑事として死ねるチャンスを待っていた」
『砂の狩人』 大沢在昌
幻冬舎文庫(下巻) … P460
 西野の捜査に対する「気持ち」を「言葉」にしたら、きっとこういうことだったんだろうな…と思いました。
 ボロボロに傷つきながらも犯人を追い詰めようとしていた西野の心の内をこのセリフで思い知り胸が熱くなりました。
 また、その心を読んだのが、一緒に泥沼に沈むと覚悟をした佐江だったってとこに感動。
ken 26歳 男性 栃木県

コメント爺 爺のコメント  佐江が言うこのセリフは、ほとんどラスト。物語の余韻を確かめさせてくれる佐江の心情に共感してしまうじゃろ。死に場所をみつけた西野、爺はまだまだくたばらんぞ。
 ワシはラスト2行の情景描写も好きじゃ。

「おい! 待て! ひとりで行くな」
「君は残っていろ。転げて怪我をするぞ」
「馬鹿云うな。君ひとりに行かせるか」
「この先に面白い顛末はないぞ。不愉快な結末があるだけだ」
「構うものか!」
『鉄鼠の檻』 京極夏彦
講談社ノベルス … P775
 この台詞を読んでこの二人の互いを思う優しさが伝わってきた。
 学校とかでも苛めが問題にあがってくる世の中だからこそ二人の様な、互いを思う友情みたいなものが必要だと思う。
 私も互いを思いやれる一人となりたい。
夜霧 露月 18歳 女性 滋賀県

コメント爺 爺のコメント 「なりたい」と心がけることで、もう半分以上は「なっている」ものじゃ。良い友にも恵まれるじゃろう。

「いいかね、この世界はなるようになるように出来ているのだ。だから君が責任を感じることはない。そしてなるようになるんだから、どうなるかなんて実はお見通しだ」
『絡新婦の理』 京極夏彦
講談社文庫 … P1004
 これを聞いた時一気に私の中の何かが落ちました。
 無茶苦茶なようで、違うような・・・
 榎さんっぽいなぁと思いました、流石、神。なんでもお見通しなんですね。
白音湖 19歳 女性 徳島県

コメント爺 爺のコメント この部分だけだと「おおぉ!さすが榎木津」と思うけれど、その後にセリフがまだ続いていて、そこを読むと榎木津が女性の心をつかんで離さない理由がなんとなく解る気がする爺なのであった。

「守、鍵というものはな、ほかでもない、人の心を守るものなんだよ」
『魔術はささやく』 宮部みゆき
新潮文庫 … P111
 この作品の『じいちゃん』は登場ページ数は少ないものの、心に残る事をたくさん言うキャラクターです。そんな『じいちゃん』のセリフの1つがこれです。
『鍵』をこんな風にとらえたことがなかったので印象に残っています。確かにそうだなと納得します。家の鍵、部屋の鍵、スーツケースの鍵、あと、銀行口座のパスワードとかも『鍵』に含まれるのかな。
『鍵』で閉ざした空間の中には、『物』が入っているだけじゃなく、持ち主のその『物』に対する色々な『思い』も閉じ込められている・・・鍵がかかっている所を開けるのは、その『思い』を勝手に覗いて踏みにじったりすることだから、気をつけなきゃいけない事なんだな思いました。
 そんな事に気づかせてくれた素敵なセリフです。
SAI 23歳 女性 アメリカ

コメント爺 爺のコメント SAIさん、『鍵』にはたしかにいろんな鍵がある。ワシはバアさんの心を護る鍵のつもりでおったが、ちょっと錆びてきたぞ。

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