第7回 (2007/6/22)
爺、がんばってます!
紀恵は言おうと思った。気は変わらないよ。絶対に変わらないよ。あなたを一人で逝かせたりしないよ。
 でも、言わなかった。この気持ちを言葉にしてしまいたくなくて。
 言葉はみんな、嘘だから。
『ドリームバスター3』 宮部みゆき
単行本/徳間書店 … P210
 人生に失望して、どん底になった人独特の考え方だと思いました。
 言葉にすれば嘘になるから言わない。そういう考えって珍しいですよね。人は誰かの言葉に励まされながら生きているけど、同時に言葉によって傷つけられてもいるのだと強く感じました。
キキ 15歳 女性 静岡県

コメント爺 爺のコメント 言葉は確かに難しいのう…。
 ホントに相手に伝えたい言葉でも、それを口に出してしまうと嘘のように聞こえてしまうから言わない、というのはワシにも過去あったかもしれないのう。
 ただ、言葉に出さなくても相手を思いやることで、伝わることは多々あるように思うのじゃ、まずは相手を思いやることじゃとワシは思うぞ。

「この世は悲しいぜ、玉泉坊。その婆ァだけじゃねえぜ。おまえも奴も、人間は皆一緒だ。自分を騙し、世間を騙してようやっと生きてるのよ。それでなくっちゃ生きられねェのよ。汚くて臭ェ己の本性を知り乍ら、騙して賺して生きているのよ。だからよ—」
 俺達の人生は夢みてェなものじゃあねえか。
 又市はそう言った。
「無理に揺さぶって、水かけて頬叩いて、目ェ醒まさせたっていいこたァねえ。この世はみんな嘘っ八だ。その嘘を真実と思い込むからどこかで壊れるのよ。かといって、目ェ醒まして本物の真実見ちまえば、辛くッて生きちゃ行けねェ。人は弱いぜ。だからよ、嘘を嘘と承知で生きる、それしか道はねえんだよ。煙に巻いて霞に眩まして、幻見せてよ、それで物事ァ丸く収まるンだ。そうじゃあねェか—」
『巷説百物語』 京極夏彦
角川文庫 … P464
 帷子辻での又市の言葉ですが、このくだりがまるッと好きです。
 そうです、その通りなんです。世の中悲しいのは当たり前なんです。そんな事はきょう日小学生だって知ってるんです。
 だけど気付いてても気付かないフリをしていたほうが幸せなコトだってあるんです。大人になるってのは気付かないフリが出来るようになることなんじゃないかと思ってやまない今日この頃です。
 ニート云々等と若者が問題視される昨今ですが、「騙す」ことが下手、あるいは「騙す」気がない人が増えている結果なんじゃないかと思います。
 果たしてそれは良いことなんでしょうか?悪いことなんでしょうか? 僕にはわかりません。
崇道院早良 19歳 男性 青森県

コメント爺 爺のコメント 悲しいこと……多いのう。
 ただ悲しいこと、ツライことばかりじゃないからのう。真正直にだけ生きていると、心も疲れてしまうからな。心にも休息は必要じゃからな!

「ありがとう」
『風化水脈』 大沢在昌
カッパノベルス … P474
 藤野組の真壁俊三が、鮫島に言った一言。
 様々な意味が読み取れるハードボイルドな5文字。
まゆたろう 31歳 男性 埼玉県

コメント爺 爺のコメント 確かにシンプルだが、こめられたものの重さを感じる一言じゃな。関係ないけど爺は体重が重いのでビリーの弟子になろうかと思うとる。

「最後は涼子さんだったんだ。そして君に感謝の言葉をいったのだ」
『姑獲鳥の夏』 京極夏彦
講談社文庫 … P614
『姑獲鳥の夏』は何度も読んでいますが、それでもこの箇所に来ると、京極堂の関口くんへの優しさが感じられて涙が出ます。京極堂、関口くん、榎木津、木場修それぞれが周りの人への愛情をストレートに出す性格ではないので、こんな感じにほろっと出てくる愛情表現に凄く弱いです。
きよ 33歳 女性 神奈川県

コメント爺 爺のコメント 素直に感謝や愛情を伝えるのは照れるし恥ずかしいで、なかなか難しいことじゃな。何気ない一言でサラッと言えるといいんだがのぅ。

「キ・キーマ!」
「お、おう!」
「僕はまだ水人族にとっての"幸運の印"だよね?」
「ああ、もちろんさ!」
 ワタルは笑顔を大きくした。「よし、それじゃ、僕はキ・キーマに幸運を授けます。どんな戦いにも、決して負けないように」
 キ・キーマは両の拳を握りしめた。「任せとけ!俺の目に入るものすべて、この腕の届く限りのものすべてを、魔族から守り抜いてみせるからな!」
『ブレイブ・ストーリー』 宮部みゆき
単行本(下巻)/角川書店 … P543
 ワタルとキ・キーマの友情の深さを改めて実感できるセリフでした。
 ワタルにとってはキ・キーマが(ミーナもだけど)もっとも頼れる存在だったと思います。だからワタルはその信頼できる親友に幻界を任せた。いや、任せることができた。そしてキ・キーマもワタルの願いに応えようとしている。そんな二人の信頼関係に心を動かされました。
コンタ 16歳 男性 三重県

コメント爺 爺のコメント ワタルとキ・キーマの絆が強く結ばれたシーンじゃったな。信頼のできる友人がいる、というのは心強いでのう。
 こんな信頼関係のある友人がいれば、どんな困難にもむかっていける、そんな気持ちにさせられるのう。
 コンタさんにもきっとそんな友人がいるんじゃろうな。だから心を動かされたんじゃろう。

「し—釋迦も彌勒も彼の下僕に過ぎない—さあ云ってみろ—彼とは誰か—」
「ぼくだ」
『鉄鼠の檻』 京極夏彦
講談社文庫 … P120
 何の迷いもなくきっぱりと「ぼくだ」と言ってしまえる榎木津さんが,まさに神のように思えました。
 この言葉を読んだ瞬間,これまでに作り出された謎,心の闇,どろどろと渦巻くどす黒いモノが一気に浄化されたような気がしました。
ユーリ 15歳 女性 徳島県

コメント爺 爺のコメント 自分に対する自信が言わしめたセリフじゃな。ユーリさんも自分の意見を言うときは自信をもって大きな声でいうことじゃな。説得力とはそういうもんじゃないかのう。

「俺は負けた。ここで死ぬんだ。運命を変えることは、できなかった」
 自業自得なんだろうなと、小さく呟く。(中略)
「だけど俺は、運命の塔へ行きたかった」
 どうしても、どうしても、どんなことをしても、行きたかったんだ。
「わかってるよ」と、ワタルは言った。「他の誰にもわからなくても、僕にはわかる。わかってるよ、ミツル」
『ブレイブ・ストーリー』 宮部みゆき
単行本(下巻)/角川書店 … P582
 ミツルとワタルの最後の会話。本当に泣けました。
 このシーンで、ミツルが自分の運命にどれほど苦しんだか、そしてどんなに運命を変えたいと願ってきたかが、とてもよくわかります。願いを叶えるために、時に冷酷にふるまったミツル。でも、他人を切り捨てて進む旅路は、ミツルもきっと寂しく、辛かったはず。このシーンで、初めてミツルの幼さが感じられました。
 ミツルに「わかってるよ」と答えるワタル。ワタルにも叶えたい願いはあったけれど、ワタルには大切な仲間がいた。もし、ワタルが独りだったら、ミツルと同じ道を歩んでいたかもしれない。ごめんね、ミツル。ワタルのそんな気持ちが伝わってくるシーン、とても感動しました。
さくもみ 21歳 女性 京都府

コメント爺 爺のコメント ミツルの気持ちが痛いようじゃなー。実際今腰が痛いんじゃが……まぁ、ワシの腰の話は置いといて、爺も久々に鼻の奥がツンときたシーンじゃわい。
 このシーンからはたくさんの方がセリフを送ってくださてるんじゃが、どのセリフを選んでも共感できるところが宮部作品のすごいところじゃろうな。

 潮騒が聞こえた。
 潮騒に善く馴染む声だ。
「死ねばそれまでとは云いませんがね。なアに吹けば飛ぶようなつまらない人生、残そうなんて思っちゃあいません。でもね——」
『狂骨の夢』 京極夏彦
講談社文庫 … P968
 この台詞読んで、自分の人生も吹けば飛んでしまうようなつまらない人生なのかな、と思いました。
 でもその人生を残そうと思ってない気持ちと感情を持っている彼女はなんだか逞しいなぁ、と共感しちゃいました。
rai 16歳 女性 富山県

コメント爺 爺のコメント 誰の人生であれ、吹けば飛ぶようなつまらない人生でもあり、その逆にそんなことは断じてないとも言えるんじゃ。 要は考えようじゃな、raiさん。
 ワシなんて、なーんも残しとらん! でも、皆さんの記憶の中に「名ゼリフコーナーに、言いたいこと言ってた爺がいたな」と残っておればそれで幸せじゃ。……おっと、そろそろお迎えがきそうなコメントになってしもうた!

「恐れ入ります。ああ、それから、あそこにいるのは僕の従者でエチオピヤ人のマスカマダ・カマスカス君です。要するに荷物持ちです。その横にいるのは電気工事業者の」
「と、遠山金伍郎ですッ」
 いい加減なことを云われる前に自分で云った方がマシだ。
『五徳猫』(百器徒然袋—風) 京極夏彦
講談社ノベルス … P136
 榎木津さんの演技が絶好調で、本島さんの必死な抵抗も見えて思わず笑ってしまいました。ありありとその情景が想像できてしまうあたり、その笑いにも更に拍車がかかって、普通の状態に戻るのにかなりかかったと思います。
神原翔子 17歳 女性 熊本県

コメント爺 爺のコメント ぶ、ぶぁっはっはっはっは〜! 本当に愉快な場面じゃの〜!
 爺のツボにハマったのは、普通の男(本島)が思わず言ってしまう「遠山金伍郎」という名前じゃな! 彼も自分では気付かぬうちに『榎木津の下僕』になるべく着々と成長(?)しておるわい。
 ワシも笑いすぎて普通の状態になかなか戻れんよ。

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